日本と世界のそば料理

日本のそば料理は、そば切りを使ったものが多く知られていますが。そば切り以前は、粒食またはそばがきのように粉食として食べられてきました。
時には、お祝いの時に振舞われていた時代もあったようでありますが、現在においては日常的な食材となっています。

しかし、豊かになった今日でも、そば産地においては各地に伝わり受け継がれてきた料理もあり、そば切りを使ったそば料理や、そば粉をつかった郷土料理などを紹介します。

また、世界においても、収穫量は日本よりはるかに多く、各国においてもさまざまな方法で食べられています。国別にそば料理を紹介します。

日本各地方のそば料理

ニシンそば(北海道)
以前、北海道ではニシンが大量に取れた時代があり、その保存方法として、「身欠ニシン」が作られていました。暖かいかけそばの上にとぎ汁などで戻したにしんをのせていただきます。
日本海の海岸地域から発展し、今は道内及び本州まで広がっています。
また、昔北前船で流通した影響か、ニシンそばの起源は明治時代京都で生まれた説もあります。

椀子(わんこ)そば(岩手県 盛岡・花巻)
岩手県旧南部藩に伝わる振る舞いそばで、椀の中には一口か二口ほどそばが入り、一椀食べ終わるとすぐ次のそばが入り、どんどん入れられるため、終了合図のタイミングが難しいです。やくみは、ネギ・せり刻みくるみ等。

はらこそば(岩手県 三陸海岸)
鮭が産卵のため秋から冬にかけ遡上する時期に、イクラをそばにのせ、お湯をかけてイクラが半熟状態になったところで食べます。

高遠(たかとお)そば(福島県・長野県)
長野県高遠地方に産する辛味大根の搾り汁に醤油または、焼き味噌をつけた汁で食べます。

すんきそば(長野県・木曽)
「すんき」とはカブの一種で木曽葉の漬物。寒い冬に、すんきの漬物を細かく刻み、暖かいかけそばにのせ食べます。

けんちんそば(茨木県北部)
福島県の県境に近い茨木県常陸太田市里美村や水府村に伝わるそばです。
野菜をたくさん入れて煮込んだけんちん汁を、温かいかけそばにかけて食べます。
「けんちん」の語源は、鎌倉の建長寺に由来しているとも言われています。

凍(こお)りそば(長野県・柏原)
大町市や上水内郡信濃町柏原に古くから伝わる保存食で、近年柏原で復活しました。茹で上げたそばを小さな輪にまとめ、厳寒の夜間外で凍らせる。この凍りそばに熱湯をかけ、もどして食べます。

越前おろしそば(福井県)
歴史は古く、当時の藩主が、武生にそばを栽培し非常食として奨励し、大根おろしを添えて食べたのが、今日に伝わるといわれています。
大根は、ネズミ、北山、それに青首などであり、大根の辛味は、皮の下にあることから、皮ごとおろして使用します。おろし汁とかけ汁を合わせた汁をそばにかけ、よく絡めて食べるのが本来の食べ方と言われています。

割子(わりご)そば(島根県・出雲)
出雲を代表する食べ方で、割子というそばを盛る器からでた名前。つゆと薬味を、そばにかけて食べる。割子3枚で一人前としています。

釜揚げそば(島根県・出雲)
出雲地方では、釜揚げそばを郷土のそばの一つとしている。茹で上げた熱いそばを蕎麦湯ごと器に盛り、冷たい濃いめのつゆを直接かけて食べます。

「そば切り」以外のそば料理

そばかっけ(青森県・岩手県)
青森県南部から岩手県北部にかけて伝わるそば料理。「欠片」かっけとは、切れ端またはかけらの意味です。
延したそばを三角形に切ってかっけを作り、ダイコンと豆腐を煮た鍋の中に入れ、浮き上がったところをねぎ味噌またはニンニク味噌につけてたべます。「はっと」とも言われています。

柳ばっと(岩手県)
岩手県遠野周辺のそば料理で、来客時に軽いおもてなしにもちいられていました。
「柳葉」または「てこすりだんご」ともいい、そば粉を水でこねてねかせ、小さくちぎり、親指で平らに延ばして柳の葉の形にする。これをダイコン、舞茸、鶏肉などと一緒に味噌仕立ての具にしたり、茹でてねぎ味噌または酢味噌をぬって食べます。

梁越(はりこ)しまんじゅう(長野県・川上)
長野県南佐久郡川上村周辺には伝わるそば焼き餅の一つ。ネギのみじん切り、おろし生姜を味噌に加え混ぜてねぎ味噌を作ります。
そば粉を振り入れた椀の中に、ねぎ味噌を混ぜたそば玉を入れ、上からもそば粉を入れてお手玉のように放り上げながら丸めていく。丸くなったら柏の葉で包み、囲炉裏の熱い灰の中で蒸し焼きにします。

うちわ餅(秋田県・岩手県)
お客をもてなすお菓子として作られたそば料理。そば粉を熱湯でこねて握りこぶし大に小分けする。これを平串に刺し棒状に延ばし、さらに団扇のように丸い形に成型し茹でます。すりつぶしたエゴマに味噌砂糖を加えまぜ、これをぬり付け焼きにする。または、クルミ味噌を付ける場合もあります。

ほど焼き(岩手県)
そば粉を水で溶いて作った団子の中に、小豆餡や黒砂糖とミルクを入れて包み、柏の葉で包んで囲炉裏の熱い灰の中で蒸し焼きにする。「火床焼き」と呼ぶ地方もあります。

そばすべし
徳島県三好市東祖谷山地区作れる「そばしべし」は、イリコで取っただしの中に、ニンジン、豆腐、鶏肉大根の葉など煮込んで入れたところに、汁をかき混ぜながらそば粉を振り入れていきます。
そば粉が固まり汁にとろみがついたところで出来上がり。

そばがゆ
そば米(ごめ)を用いて、粥にしたもの。
鳥の叩きや干した鮎でだしを取って作る地方もあり、そばを米、野菜と煮込み、味噌仕立てにしたものを「そば雑炊」という。
岩手県八幡平市安代町では、「そばかゆもち」があり、鍋のお湯にそば粉を振り入れながら練り上げて作る。ニンニク醤油やネギ味噌で食べます。

そば米(ごめ)雑炊
粗野地方の保存食品。玄蕎麦を茹で乾燥、脱穀し丸抜きにします。お粥を炊く要領で炊きます。

そばおやき(長野県)
そば焼きもちの一つ、そばがきをそのまま丸い形にしたものや、その中に漬けもや小豆餡を包み焼いたものです。

世界のそば料理

スロベニア 
「カーシャ」外皮を取った「挽き割りそば」のことで、日本の「玄そば」にあたる。スロベニアやヨーロッパの国々では「カーシャ」と呼ばれています。
日本の米のように料理し、そのまま食べてり、魚や肉と付け合せとして食べます。

イタリア 
イタリアでは、粒食はほとんどなく粉食の形が中心であり、イタリヤ北部でそばはよく食べられている。「ピツォケリ」イタリアの代表的なそば料理。
これは、そばのパスタにあたり、わが国のきしめんのような形がポピュラーであります。「シアット」水でこねた柔らかいそばがきにグラッパを少量入れ、スプーンですくって中にチーズを入れ素揚げにしたものです。

フランス 
とくにブルターニュ地方ではそばがよく利用されています。そば料理として、「クレープ」や「ガレット」などがあります。

ポーランド
ポーランドでは、そば米が一般的です。伝統食として、そば粉米で作るソーセージ、マトンのそば米料理、そば米を詰めた子豚料理、そばパスタなどがあります。

チェコ 
そば米(カーシャ)が一般的で、そば米を詰めたソーセージ、そばハーブ茶などがあります。

スイス
そばは主に南部で利用され、パスタ料理(シュベッレ)、トウモロコシとそばセモリナ粉から作る(ボレンタ)もあります。

アメリカ・カナダ
そばはポピュラーではないですが、そばパンケーキやそばホットケーキなどがあます。また、ロシアなどの移民の多い地域では(カーシャ)が食されています。

ロシア 
全粒、または挽き割にした(カーシャ)として粒食が主流であり、(ブリーに)などの料理もあります。

中国
中国はそばを食べなく、輸出用が主であります。しかし内モンゴルや少数民族では日常的にそばが食べられてきました。

ヒマラヤ諸国
フライパンや直火で焼く、パインケーキやクレープ風のものが多いです。ニンニクや唐辛子のきいたたれをつけて食べるのが一般的です。

南・北朝鮮
伝統的な(ムー)と呼ばれる羊羹状のもの。そば冷麺などがあります。

参考文献:改正そば打ち教本

まとめ

世界から見た日本は狭い国ですが、各地域で受け継がれたそば料理がたくさんあります。地域の特徴を出した郷土料理ともなって長いあいだ受け継がれているようです。
また、世界にもたくさんの国と地域があり、風土・民族・習慣等がそれぞれあり、そばの食べ方は国の数以上に多いと思います。今回は、代表的な国のそば料理でしたが、ほんの一部かと思われます。
どちらとも、機会があれば食べてみたいそば料理でした。